量子力学が何を証明しても、家賃は減らない――「宇宙意識」を生活へ持ち込む前に

星空の見える部屋で、請求書と鍵が置かれた生活の机 サンプル解析

ネットを見ていると、ときどき次のような言葉が流れてくる。

「量子力学によって、意識が現実を作ることが証明された」

「わたしたちは宇宙意識の一部であり、本当はすべてつながっている」

宇宙の始まりが物質なのか、意識なのか。わたしには分からない。ただ、一つだけ分かる。

宇宙の正体がどちらであっても、月末の引き落とし額は変わらない。

問題は、宇宙意識ではなく、その次の一文にある

「宇宙の根源は意識である」。ここまでは、宇宙についての仮説である。

ところが、そこから突然、「だから、あなたは何もしなくても尊い」「不安を手放せば、必要な現実が引き寄せられる」「頑張らず、宇宙へ任せればいい」という人生相談へ移る。

この飛躍が分からない。

宇宙が意識から生まれたとしても、家賃を払わなければ滞納する。食べなければ腹が減る。動かなければ筋肉は落ちる。

宇宙論と、今日の生活をどう処理するかは別の話である。

意味が人を動かすことはある

だからといって、宇宙意識やワンネスを考えることが、すべて無駄だと言いたいわけではない。「自分は大きなものの一部だ」と考えて、死への恐怖が軽くなる人もいる。「すべてはつながっている」と感じて、人への接し方が変わる人もいる。

その結果として眠れるようになり、外へ出て、必要な連絡をし、仕事へ戻れるなら、その考え方は本人の生活で役に立っている。

意味が変わり、行動が変わり、現実が変わる。そこには物理的な経路がある。

問題は、意味によって行動が生まれる場合と、意味によって行動しない理由を作る場合を、同じものとして扱うことだ。

「意識が現実を作る」は、途中を省略している

意識が変われば、見るものが変わる。見るものが変われば、選ぶ行動が変わる。行動が変われば、会う人、使う金、身体の状態、仕事の結果が変わることはある。

しかし、「意識が変わった」と「口座残高が変わった」の間には、実際の行動がある。そこを消して、「意識が直接、外の現実を書き換えた」と説明すると、現実を動かしたものが見えなくなる。

わたしが酒を止め、食事を変え、身体を動かしたあとに、同じ仕事がまったく違って感じられるようになったのも同じである。気分だけを先に変えたのではない。

身体が変わった。その結果、行動欲求と自己感覚が変わった。

量子力学を否定しなくても、生活へ戻れる

量子力学の研究が、最終的にどのような宇宙像へ到達するのかは知らない。わたしが理解できていない理論も大量にある。だから、「量子力学は絶対に意識と関係ない」と、こちら側から断言するつもりもない。

しかし、専門的な研究の一部を見て、自分に都合のいい人生論だけを確定事項として受け取る必要もない。

明日の支払いが不安なら、残高を見る。身体が重いなら、酒、食事、睡眠、運動を確認する。仕事が嫌なら、何が嫌なのかを分け、辞めるのか、減らすのか、別の収入を作るのか考える。

宇宙の正体が分かるまで待たなくても、今日できることはある。わたしに必要なのは、「宇宙とつながっているから大丈夫」という安心ではない。

やれることを実際にやり、「ここまでは処理した」と思える状態である。

物理が先、意味が後。量子力学が何を証明しても、今のところ、この順番は変わっていない。

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